オフィスでは分からなかった、現場で使う図面とは
こんにちは!
今回は、「建設現場でCADオペレーターってどんな図面を描いてるの?」というテーマでお話ししてみたいと思います。

私は空調設備・衛生設備が専門なので、“設備会社”の視点で説明しますね!
私はCADオペレーターになった当初、設計部門にいたので施工図のことをよく知りませんでした。
その後、オフィスで現場支援として施工図を描いていましたが、それでも
- 現場では、どんな図面が必要とされているか
- 現場事務所のCADオペさんは、どんな図面を描いているのか
なんて、全然分からず…。
そしてその後、現場事務所に常駐するようになってから初めて、
(現場では、こんな図面も必要なんだー!)
と、知ることができました。
そこで今回は、
- CAD初心者さん
- 図面を描いていても現場の事情まではよく知らない人
に向けて、「建築現場にて、(空調・衛生の)設備会社がどんな図面を作成しているのか」を説明しますね♪
まずは「施工図」ってなに?
建物を建てるとき、設計図だけでは不十分です。
というのも、設計図はあくまで「こう作ってほしい」という理想の姿。
でも、現場では
「実際にどうやって作るか」
「どこに何を取り付けるか」
「配管や機器はどう通すか」
といった“具体的な指示”が必要になります。
そこで登場するのが、施工図。
この施工図をもとに、現場の作業員さんが迷わず作業できるよう、CADオペレーターは細かく図面を描いていくんです。

正しくは、施工図を描く人を「CADオペレーター」とは呼ばないそうですが、世間一般では、きっちり分けていないので、ここでは両方CADオペレーター…略してCADオペと呼びますね。
私が現場で描いてきた図面の種類
設備会社として、現場で必要とする一般的な図面の種類を、ご紹介いたします!
設備施工図(平面図)
空調、換気、給排水、消火、計装など、設備の位置やルートを建物の平面上に描く図面です。
建物の規模によって縮尺は異なりますが、現場作業員に渡す図面としては、経験上1/50が多いです。A1サイズの用紙に印刷して、現場に渡します。
ただこれも、臨機応変に変更されますので、1/60ということもありました。
ゼネコンさんなどから設計図を受け取ると、まずはそれを元に叩き台となる施工図を描きます。
設計図はレベルや納まりなどが考慮されていないので、設計図通りになることは、ほぼありません。
また、工事が進むにつれ、変更・修正は日常茶飯事。
竣工(工事が終了)の頃には、最初の叩き台とは全然違う施工図になっていることはザラです。
詳細図
平面図の一部を拡大して、より細かく描いた図面。
たとえば、機器や配管、ダクトなどが密集している箇所は、サイズ表記や寸法などを描きこむスペースが足りなくて、無理やり記入するともう、ゴチャゴチャになります。
そのように、窮屈な場所を拡大して見やすく描きます。
見やすくしないと、現場から文句や愚痴が飛んでくることがあります(汗)

おじいちゃんの現場作業員から「老眼だから、見えねぇ~!」と言われたりします。私も老眼なので、「私が見えれば大丈夫だろう。」という基準で描いています(笑)
詳細図は1/30が多いですが、これもより見やすくするために、1/20や1/10など、臨機応変に対応しています。
断面詳細図
平面図(上から見た絵)では見えない部分を、垂直に切断して描いた絵を「断面図」と呼びます。それを拡大して描いたのが「断面詳細図」です。
現場の作業員さんが見やすいことが優先なので、縮尺はかなり臨機応変に対応しています。
また、切断せずに、垂直方向から見えるままの絵を描いたものを「立面図」と呼びます。

建築図は、断面図(または矩計図)と立面図をきっちりと分けていますが、設備の場合は立面図と呼ぶことは少なく、全部「断面図」扱いです。
トイレ展開図
壁や天井などを“真横から見た状態”で描いた図面を展開図と呼びます。
壁面に取り付ける機器や仕上げ材の位置を確認するのに使われます。
衛生設備では、この“展開図”のうちトイレ部分を利用して、トイレ展開図を作成します。
トイレの壁面を正面や真横から見た状態で描いて、便器や手洗い器、鏡、ペーパーホルダーなどの取り付け位置や、給水・排水の断面図(配管の立ち上がりや勾配など)を描き込みます。
調整・取り合いの要!「総合図」
総合図というのは、いろんな業種(建築・空調・衛生・電気)がそれぞれ描いた図面を「ぜんぶ重ね合わせた図」のことです。
配管・配線・ダクトなどは非表示にし、機器や器具など「その位置に配置したいもの」を図面上に表示します。
建築(ゼネコンなど)・空調設備、衛生設備、電気設備等の会社で、ひとつの図面データを回覧し、
- それぞれの設備が重なっていないか
- それぞれのバランスが悪い配置になっていないか
など、チェックや修正を行います。
「ここは(他社に)移動して欲しい。」などの要望があれば、コメントとして描きこんだり、会議の際に相談したりします。
総合図は一般的に「天伏図」と「壁床図」の2種類があります。
天伏図(てんぶせず)
天井下から見上げた時に見える設備の配置を記したもの。

建築図だと、正式名称の「天井伏図(てんじょうふせず)」と図面タイトルに書かれていることが多いのですが、設備図だと、なぜかちょっとだけ省略された「天伏図(てんぶせず)」と呼ばれることが多いです。
照明・火災報知器・エアコン室内機・制気口(空気の出入口)・点検口などを配置して描きます。(挙げたらキリがないほど、他にもいろいろとあります。)
天井がある部屋ですと、天井パネルの目地に合わせて配置することが一般的です。

普段は、照明の位置を優先して、その間にエアコンの室内機や制気口をバランスよく配置しますが、空調・換気設備が納まらない(設置できない)場合は、電気設備のほうを移動してもらっています。

上記は、緑色が換気設備(制気口)、ピンク色が電気設備(照明)です。
重なってますよね。
この場合は電気設備を移動していただきました。
壁床図(かべゆかず)
壁に取り付ける機器(スイッチやコンセント、壁付け照明など)の位置を調整する図面です。
エアコンや熱交換器の有線のリモコンや、壁に付く制気口なども配置します。
(こちらも挙げたらキリがないほど、他にもいろいろあります。)
総合図で各社の設備の位置の取り決めをしないと、各々が好き勝手な位置に決めてしまい、とんでもないことになります。
ですので、現場ではとても重要な図面のひとつです。
スリーブ図
建物って、ただ壁や床を作って終わりではなく、そこに給水・排水・空調・電気など、いろーんな配管や配線を通さなきゃいけません。
でもコンクリートを打った後に「やっぱり穴を開けたいです」って言っても無理難題(汗)
だからこそ、あらかじめ「ここに穴(スリーブ)を開けておきますよ」という位置を示したのがスリーブ図です。

穴が足りなかったり小さかったりした日にゃ、そりゃ~冷や汗ものです。
梁スリーブ図
建物の梁を貫通させるためのスリーブ図です。
基礎の場合は、基礎梁スリーブ図とか地中梁スリーブ図と呼びます。
ただし!梁は構造的にとっても大事な部分なので、勝手に穴を開けるわけにはいきません。
梁スリーブ図を構造設計者さんへ提出し、可否の判断を待つ形となります。

これはスパイラルダクト(丸ダクト)用のスリーブです。
外壁スリーブ図
建物の外側にある壁を通して、ダクトや配管・配線などが出入りする場合に必要な図面です。
雨仕舞いや断熱処理も関係してくるので、こちらも慎重にチェックが入ります。
内壁スリーブ図
建物の内側の壁を通すスリーブ図です。
室内の配管・ダクト、配線が通る場所に使われます。
内壁がコンクリートの場合には作成しますが、間仕切り壁と呼ばれる軽鉄(LGS)の内壁の場合は省略することもアリ。
床スリーブ図(スラブ貫通)
床に通す配管のための穴をあける位置を描いた図面です。
とくにトイレや洗面所などの排水管が多く通る場所では、非常に重要!

大便器の汚水排水の位置がずれると、めちゃくちゃ苦労します!
スリーブ総合図(または集約図)
各階ごとに、すべてのスリーブをまとめた一覧図のようなものです。
建築・構造・設備のすべての業者さんが、干渉しないように調整するための“まとめ図”として使われます。

梁スリーブの場合、穴を開けて良い場所がかなり限定されるので、設備会社間の話し合いは必須です。
インサート図
天井から配管やダクトを吊るための「吊りボルト」。それを固定する“インサート”という金具の位置を示す図面です。
これ、めちゃくちゃ細かくて、描くのに時間がかかるんです。
CADには、ダーッと一気に入れられる機能はあるのですが、どうしても調整が必要となるので、結局セコセコと移動したり追加したり…。

個人的には、インサート図はちょっと苦手…いえ、嫌いな図面です

上の画像はスパイラルダクトのインサート図の一部分です。
ダクトだとインサートの間隔が広いので、まだマシですが、配管だともっと狭いので大変です。(配管の種類やサイズによってピッチは異なります。)
アンカー図
「アンカーボルト」の位置を描いた図面。
アンカーボルトとは、機器などを固定するためにコンクリートの基礎に使うボルトのこと。
配管図やダクト図と一緒に、アンカーの位置を描く人もいますので、必ず存在する図面ではありません。
ただ私の経験上、「欲しい」と言われることが多かったですし、アンカーの位置だけをピックアップした図面を作成したほうが、見やすくて親切だと思って作成しています。
竣工図(しゅんこうず)
工事が終わったあとに、実際にどう施工されたかを記録した完成図面のこと。
将来のメンテナンスや改修のときにも役立ちます。
提出用資料としても大切です。

配管やダクトの施工図は複線で描くことがほとんどですが、設計図や竣工図は、一般的に単線で描かれます。
一般的ではないが、必要となることが多い図面たち
まだまだありますよ〜!
配管加工図
加工管を制作するための図面。
加工管とは、あらかじめ決まった長さや形にカットされた配管のこと。
現場での手間を減らすために、工場で作ってもらいます。そのための加工指示を描いた図面です。
施工要領書用の詳細図
施工要領書というのは、「どうやって作業するか」を説明する資料です。
その中に入れるための図面も、CADオペが描くことがあります。

現場で必要な書類ですが、その挿絵をCADオペが描く場合があります。
本社や支店などに在籍するCADオペが、現場支援として描く場合もあります。
搬入ルート図
機器や部材を現場に運び込むとき、どのルートで通すのかを描いた図面。
エレベーターに入る?階段で?クレーンで吊る?…など、実はけっこう重要!
一般的には現場監督者が作成しますが、忙しくて手が回らない時など、よく依頼されました。

ネット上からクレーンのCADシンボル図をダウンロードして、クレーンが届く範囲などを描いたりしました。
図面は「人に伝える」ための道具
CADオペレーターの仕事って、ただ図面を描くだけじゃないんです。
その図面を見て現場の職人さんたちが、“どう施工するのか”をきちんと理解できるように描くのが、私たちの役目です。
「ここ、作業員の手が入るかな?」
「もっと見やすいように、断面図を入れておこうかな?」など、
そんなふうに、日々いろんなことを考えながら図面と向き合っています。

現場を知らないで描いている図面屋ですが、精一杯イメージを膨らませて、毎日セッセと図面を描いています。